令和7年5月16日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」を第217回通常国会に提出し、衆議院で修正のうえ、6月13日に成立しました。
年金制度改正法の概要
1. 社会保険の適用拡大(106万円の壁撤廃)
パート・アルバイトなど短時間労働者の厚生年金および健康保険の加入基準が緩和されます。
賃金要件(月収8.8万円=年106万円以上)が撤廃され、週20時間以上の労働で加入になります。
また、企業規模要件は段階的に縮小し、最終的には従業員数10人以上へと対象が拡大されます。(2027年〜2035年にかけて順次実施)
損する人
これまで厚生年金保険料の支払いが免除されていたパート労働者も、新たに加入対象となり、毎月の手取りが減ります。
また、週20時間に労働時間を調整する動きも考えられます。
その場合、労働者の確保などが問題になり企業収益の悪化などへ波及する可能性もあります。小さな出来事とは言いませんが、バタフライ効果的にどんな影響に繋がるか計り知れません。
2. 在職老齢年金の見直し(62万円の壁への引上げ)
65歳以上で働きながら年金を受給する場合の減額開始ラインを、現行の月額50万円から62万円に引き上げます。
損する人
月額50万あればとは思う一方で、何歳まで働かなきゃいけないんだ。って思う人が損します。好きで働く分には損しませんね。
なぜ、収入があると年金の支払いが減るのか、私的には疑問です。再分配が過ぎると思います。
3. 遺族年金制度の男女格差解消
子どものいない配偶者(20〜50代男性含む)へ、遺族厚生年金の有期支給(原則5年)を導入。
損する人
遺族年金制度の対象者です。正直言って40ぐらいで先立たれて、それまで主夫、主婦してたらおわります。
得する?人
寡婦年金?という名前だったと記憶してるんですが女性は貰えて、男性は貰えなかった制度部分が男女の区別なくなり、年収の制限もなくなる様です。
4.標準報酬月額の上限引上げ
厚生年金保険料や受給額の計算基礎である「標準報酬月額」の上限を、65万円→75万円へ段階的に引上げ(2027年〜2031年のスケジュール)。
損する人
収入が多い人が損します。
支払った分、年金額が上がると記載されてますが長生き出来れば確かにそうかもしれません。
このクラスの収入があれば個人で適切に資産運用した方が儲かる人も多いのではないかと思います。
5.その他の改正点
iDeCoの加入可能年齢が60歳→70歳に引き上げ。
企業年金の情報開示強化、年金分割請求期限(離婚時)が2年→5年に延長など。
分かりにくいところに記載されている変更点
5.将来の基礎年金の給付水準の底上げ
① 政府は、今後の社会経済情勢の変化を見極め、次期財政検証において基礎年金と厚生年金の調整期間の見通しに著しい差異があり、公的年金制度の所得再分配機能の低下により基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合には、基礎年金又は厚生年金の受給権者の将来における基礎年金の給付水準の向上を図るため、基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドによる調整を同時に終了させるために必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、給付と負担の均衡がとれた持続可能な公的年金制度の確立について検討を行うものとする。
② ①の措置を講ずる場合において、基礎年金の額及び厚生年金の額の合計額が、当該措置を講じなかった場合に支給されることとなる基礎年金の額及び厚生年金の額の合計額を下回るときは、その影響を緩和するために必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html
厚生年金から基礎年金へ
「厚生年金の一部を基礎年金に移す(厚生年金積立金を流用する)」という話については、現在の改正法案には含まれていません。
当初、政府案には「厚生年金の積立金を使って基礎年金の給付水準を底上げする」との案が含まれていました。しかし、調整の過程ですり替えられ、除外されたことが報じられています。
「厚生年金の“あんこ”(=積立金)を抜いたパン(=年金改革)」と称され、野党や一部メディアからは、基礎年金の財源確保策としての積立金流用が疑問視・批判されていたことも事実です。
私が思うに、少数与党である事、参院選前である事からも国民が納得しないであろう部分を省いたという対応な気がします。




